昨年(2024年)実施した第10回痴漢抑止バッジデザインコンテストには、628作品のご応募がありました。その中から、受賞5作品を製品化しています。それだけではなく、例年、最優秀賞を受賞した学生さんに次年度のコンテスト募集チラシとポスターのデザインをお願いしています。
痴漢抑止バッジデザインコンテストは、電車内痴漢犯罪を、被害者と加害者の問題とするのではなく、社会全体の意識を変えて解決しようとする活動です。「自分は被害にあってないから、関係ない」ではなく、あなたが学んでいるデザインで社会を変えてください! そう考えて毎年夏に学生を対象に開催しています。
世の中のあらゆるモノ、CM・ポスター・商品パッケージ etc. には、デザイナーが関わっています。デザインは、人の潜在意識に働きかける力をもっています。だから、ジェンダー意識の高いデザイナーが増えれば、社会の意識も変化する。私たちはそう信じています。
このデザインコンテストからプロのデザイナーを輩出したい。そのために、コンテストで最優秀賞を受賞された方に、「仕事」として次年度のチラシ・ポスターの制作を依頼しているのです。
今回は「第11回 痴漢抑止デザインコンテスト募集チラシのデザインができるまで」と題し、プロのデザイナーのアドバイスで、受賞学生のチラシデザインが仕上がっていく工程をお届けします。
メンバー紹介
痴漢抑止活動センターはコンテストを主催していますが、松永はデザインに関しては素人です。
そこで、チラシ・ポスターのデザインアドバイスは、国が設置した無料の経営相談所「大阪府よろず支援拠点」のコーディネイター岩田さん(デザイナー)にいただいています。
よろず支援 岩田:
WEBデザインでいうところの2カラムという感じで見やすいですね。
左側の縦書き部分は、レコードやCDの帯みたいになるんでしょうか?
松永:
カバンのイラストにバッジを付けて、使い方と前年度受賞作を紹介する工夫がいいですね!
よろず支援 岩田:
制作したバッジを「誰がどのように使うのか?」を伝えているのがうまい。これは、デザインを考える時にも重要です。
松永:
最優秀賞のバッジは、もうちょっと肩の上に置いてほしいな。そこが痴漢抑止バッジの推奨付け位置で、重要なポイントなんです。
松永:
これはA4チラシのデザインなので、イラストの右側に配置されているテキストは裏面に回せますね。
よろず支援 岩田:
そうですね。そのぶん空間ができるので、イラストをどのように配置・拡充するかがデザイナーの力量になりますかね。
松永:
カラーによってもイメージは大きく変わるでしょう。
よろず支援 岩田:
上記を踏まえたうえで、カラーが分かるラフ案を複数案、出していただけますか? とデザイナーさんに伝えてはいかがでしょう。
フィードバッグで修正の希望が入りますから、ラフデザインの完成度は7~8割程度の感じでOKです。。
松永:
カラーラフを3パターン考えて、提出してくれました。
よろず支援 岩田:
独特の色彩感覚にデザイナーさんの個性が出ていますね。
松永:
昭和レトロっぽさを感じて、今の若い子にウケそうです。
よろず支援 岩田:
昨年度の受賞作品紹介が、ゴチャっとした印象ですね。
松永:
学校名と所属の科やコース名を入れてあるので、情報量が多いんですよね。
学校名だけにしましょうか?
よろず支援 岩田:
そうですね。最優秀賞は、このままにして。他は学校名だけにしましょう。
松永:
「私がこのチラシをデザインしました」の文言が抜けています。
最優秀賞バッジをつけた子が、吹き出しで言ってくれたらいいなぁ。
よろず支援 岩田:
そうすると、キャラクタに顔が必要ですね。
松永:
そうですね。
正方形のインフォメーション部分や、後援のフッター部分に余裕があるので、それぞれ詰めてもらって…
よろず支援 岩田:
顔が入るといいですね。
松永:
学生のデザインで社会の課題を解決! も目立たせたいし、吹き出しにしちゃってもいいかも。
よろず支援 岩田:
受賞5作品を製品化! も吹き出しにすると、キャラが3人いる意味が生まれますね。
松永:
いいですね!
よろず支援 岩田:
カラーは、1か3がいいと私は思いますが、松永さんのご意見は?
松永:
私も、その2つから選びたいです。3の方が視認性がいいので、パターン1の時は、パターン3のように視認性アップしてほしいかな。
よろず支援 岩田:
ご本人に選んでもらいましょうか。
松永:
そうですね。
〈修正指示〉
松永:
チラシ表面/裏面のデザイン1校目があがってきました。
よろず支援 岩田:
このデザイナーさん、レベル高いですね。将来有望だと思います。
松永:
微調整してほしいところはあるけど、ほぼほぼ完成してますね。
よろず支援 岩田:
イラストの顔もいい感じでいれてくれました。
松永:
右端は男の子かな? 性別に関わりなく痴漢被害に遭うので、重要なキャラクタです。
よろず支援 岩田:
カバンにつけたバッジを傾けてくれてますね。
松永:
自然な角度でGood! と思います。
よろず支援 岩田:
「わたしがこのチラシをデザインしました」はもう少し大きくてもいいのでは? デザイナーさんの謙虚さがフォントサイズに現れてる気がします。
松永:
吹き出しはそのままでもいいけど、文字はもうちょっと大きくしてほしい…
よろず支援 岩田:
吹き出しといえば、「受賞5作品を製品化!」も吹き出しにしたらどうでしょう。
松永:
キャラクタ2人が一緒に話してる吹き出しでも面白いかも。
よろず支援 岩田:
いいですね。
松永:
裏面もキレイにまとまっています。
よろず支援 岩田:
応募資格と第11回募集チラシができるまでは、テキストが2段落になっているから、段落間をちょっと開けると読みやすくなります。
松永:
WEBサイトでよく使われる手法ですね。
よろず支援 岩田:
今朝のニュース番組で、若者の間で昭和レトロが流行っているという話題を取り上げていました。流行を押さえて、チラシデザインに取り入れている、感性が素晴らしいです。
松永:
では、この路線でポスターに展開してもらいますね。
チラシの完成! 修正事項にはなかったけれど、太田さんの提案で変更したところもあります。どこをブラッシュアップしたのか、探してみてくださいね。
A4チラシをベースにして、B2ポスターを作成していただきました。
プロジェクトメンバーにも大好評の仕上がりとなりました。
太田心来さん、お疲れ様でした!!
チラシとポスターを制作した感想を伺いました。
第10回デザインコンテスト最優秀賞 太田心来さん(専門学校文化デザイナー学院 ) コメント「第11回痴漢抑止バッジデザインコンテスト」のポスター・チラシ制作を通して、多くの助言や修正のご指導をいただきました。その一つひとつが大きな学びとなり、作品の完成度を高めるうえで欠かせないものでした。学生という立場で、未熟な点も多く、ご迷惑をおかけした場面もあったかと思いますが、皆さまのおかげで、自分自身も大きく成長することができたと実感しています。
ポスター・チラシ制作にあたり、関わってくださったすべての方々に、心から感謝いたします。
ポスターやチラシには、細部までこだわり、丁寧に取り組みました。私のデザインを通して、一人でも多くの方にこのコンテストの存在を知ってもらい、「痴漢抑止」という大切なテーマについて考えるきっかけとなれば嬉しいです。
この貴重な経験を糧に、これからも積極的にデザインに取り組んでいきたいと思います。そして本コンテストが今後も多くの人に支持され、より発展していくことを心から願っています。
無事にチラシとポスターが完成しました!
第11回痴漢抑止バッジデザインコンテストの応募期間は2025/8/1〜9/10です。
たくさんのご応募お待ちしております。。
痴漢抑止バッジデザインコンテストに関心をもってくださりありがとうございます。
これまでに、延べ1245校から7735作品の応募がありました。
課題に取り上げてくださった先生方からは
といった点で評価をいただいております。
デザインの際に、痴漢問題について調べることで防犯意識が高まる効果も見込めます。
ぜひ、学校での課題としてご参加ください。